妊婦加算とは?事実上の妊婦税?なぜ厚生労働省が妊婦加算を凍結したのかや最新状況を解説

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2018年度に導入された「妊婦加算」と呼ばれる制度を知っていますか。

妊婦加算とはSNSのある投稿をきっかけに多くの人から批判を浴びて、凍結された制度です。話題になったことは知っていても制度の内容自体を知らない人もいるでしょう。

そこで今回は、

  • 妊婦加算とは?事実上の妊婦税なのか?
  • 妊婦加算が導入された経緯
  • 妊婦加算が廃止された理由
  • 妊婦加算に関する最新の情報

を順番に解説していきます。

この記事を読めば、妊婦加算の基本的なポイントと導入・廃止された背景を理解したうえで、最新の状況を知ることができます。妊婦加算について知りたい人だけでなく、これから妊娠を考えている人にもおすすめの内容です。

ぜひ、記事の最後まで目を通してみてください。

妊婦加算とはそもそも何か?事実上の妊婦税との声も?妊婦加算を巡る最新状況を解説

妊婦加算とは何かを簡潔に言うと?

妊婦加算とは、簡単に説明すると妊娠中の女性が診療を受けた場合に通常よりも料金が高くなる制度です。

診療報酬はいくつかの項目で構成されていて、それぞれの点数を元に患者が支払う診察料が決定します。

病院などの医療機関から受け取った処方箋をよく見ると、下記のような項目をもとに料金が決定されていることが分かります。

  • 診察料
  • 投薬
  • 病理診断
  • 自費項目 など

診療報酬にはいろいろな項目がありますが、妊婦加算とは「診察料」が通常よりも多くかかる制度です。具体的には、下の表のように診療日や診療時間などの条件に応じて金額が加算されます。

初診/再診 初診 再診
休日 約350円 210円
深夜 約650円 510円
診療時間内 約230円 約110円
診療時間外 約350円 210円

※表中の料金は、健康保険適用(3割)のもの

事実上の妊婦税とは本当か?

2018年度の診療報酬改定で妊婦加算が導入されましたが、事実上の「妊婦税」だと批判する人もいます。

結論から言えば現状の妊娠加算は、事実上の妊婦税と捉えられても仕方がないでしょう。

なぜなら、医療機関で検査をしたり、薬を出したりしなくても妊婦加算が行われるからです。

小児加算や生活習慣病管理料などは、患者の特別な属性に配慮した診療をした場合に発生します。

しかし、妊婦加算は投薬する必要がないコンタクトレンズの処方や歯科の治療ですら、診療報酬が加算されてしまっていたのです。

このような状況では、妊婦の自己負担が増えるため「妊婦加算=妊婦税」と認識されるのもあながち間違いとは言い切れません。

多くの人が妊婦加算に対する批判を持ったことから、厚生労働省は都道府県に対して情報提供を求めたり、患者に妊婦加算の周知の協力依頼を出したりなどの対策を取っています。

妊婦加算の運用は、今後改善の余地がある制度と言えるでしょう。

妊婦加算はいつ、どのように導入された?妊婦加算が導入された経緯

そもそも、妊婦加算はどのような背景で導入されることになったのでしょうか。妊婦加算の目的や産婦人科の状況について解説していきます。

妊婦加算導入の目的は「丁寧で適切な診療を医療機関に促すため」

妊婦の診療はいろいろなリスクが伴うため、「できるだけ妊婦している患者の診察を産婦人科にお願いしたい」と考える医療機関が多いようです。

一般的な風邪で妊婦が内科を受診しても、産婦人科で診療を受けるように促された事例もあります。

患者が妊娠していると胎児の影響を考えて、投薬内容を判断しなければいけません。

そのため、妊婦を診療した場合に通常よりも報酬を上乗せする制度の導入に踏み切ったのです。

つまり、当初妊婦加算には、産婦人科以外の医療機関でも妊婦が丁寧で適切な診療を受けられるようにする目的があったのです。

こうした背景を知ると、妊婦加算は妊娠中の女性にとってメリットもある制度と理解できるでしょう。

しかし、妊婦加算のは診療報酬を決定する会議であまり関心が集まらないまま導入に踏み切ってしまいました。この事実は、厚生労働省も認めています。

妊婦が医療機関を受診しやすくなるための妊婦加算ですが、制度が導入された後に一般への分かりやすい案内は行われずに誤解や批判を生んでしまったと言えるでしょう。

産婦人科が導入を求めるほど負担がかかっていた

妊婦加算の目的は、妊婦のための医療環境を整えることだけではありませんでした。

妊婦加算は、妊婦の診療にあたる産婦人科の負担を軽減するための制度でもありました。実は、妊婦加算は産婦人科医が主体となって導入を求めた制度なのです。

以前よりも産婦人科に負担がかかった背景には、社会で活躍する女性の増加があります。

働く女性が増えたことで、高齢出産をする妊婦が多くなりました。

高年齢で妊娠や出産をする場合は、通常よりも早産や合併症の発生、胎児の低体重化などの問題が起きやすくなります。

産婦人科はよりリスクが高い妊婦から順番に診療する必要があるため、リスクが比較的低い妊娠中の患者を他の医療機関で受け入れてもらいたいと考えたわけです。

妊婦加算はなぜ廃止された?

結果的に妊婦加算制度は廃止が決定しました。制度が廃止になった理由とは、どのようなものでしょうか。具体的な廃止理由を3つ解説していきます。

SNSでの炎上がきっかけで妊婦加算の問題点が浮き彫りに

厚生労働省から妊婦加算制度に関する分かりやすい説明が行われない状態で、SNSにある投稿がされました。

投稿の内容は、「皮膚科を受診して妊婦であることが分かったタイミングで会計が変更になった」というものでした。

SNSの投稿は瞬く間に拡散され、以下のような違和感を感じた人から批判が殺到したのです。

  • 妊婦加算制度を知らないまま患者が料金を支払った
  • 診察後に妊婦と気付いた=診察中は妊婦として特別な配慮は行われていない

先に説明した通り、妊婦加算の導入の目的は大きく間違ったものではないでしょう。しかし、妊婦加算制度を実際に運用した後に以下のような問題点が浮き彫りになったのです。

  • 妊婦だと特別な配慮の有無に関係なく加算される
  • 制度の周知が十分でなく、請求時に初めて知る患者も珍しくない
  • 制度名に「加算」が使われるのが不適切

妊婦加算には以上の問題点があったため多くの批判の声を集めてしまい、凍結されることになりました。

自民党の厚生労働部会や公明党からも批判を浴びた

このような声を受けて2018年12月に開かれた自民党の厚生労働部会では、「妊婦加算とは子育てをサポートする方針に逆行した制度」という意見が上がりました。

また、公明党からも妊婦加算の制度自体を見直すべきと指摘されたことで、厚生労働省は制度の着地点を探すことになりました。

厚生労働省の幹部たちは、自民党の主要議員に対して妊婦加算を廃止する説明を行うことになります。その他、妊婦加算制度の継続を臨んでいた医師会の幹部に電話をして、説得をするなどさまざまな対応に追われました。

結果、自民党の厚生労働部会が終了してから12時間後に妊婦加算制度の廃止が決定することになったのです。

医師会では妊婦加算の廃止は政治的な決定であると批判が上がりましたが、部会で廃止が決定された翌日には厚生労働省によって妊婦加算の凍結が一般市民に伝えられました。

知名度や理解度の低さに加え、名称も問題に

カラダノートが2018年10月30日に発表した調査結果によると、妊婦加算の認知度は「25.9%」です。制度自体知らない人は過半数の「56.2%」、聞いたことがある人は「17.9%」という状況が明らかになりました。

また、同調査では妊婦加算を診療報酬として導入することに、「67.4%」の人が反対していることも分かりました。

妊婦加算制度の目的が「妊婦の医療環境を整えるため」であったとしても、このように国民からの理解を得られなければ制度を継続するわけにはいかないでしょう。

先に少し触れましたが、制度名に「加算」が使用されている点に疑問を持つ人もいました。

妊婦からすれば、妊婦加算は「診療費が上がる=マイナスの出来事」です。そのため、制度名も批判を浴びる原因のひとつになりました。

これから妊娠を考えている方やそのご家族は必見!妊婦加算の最新状況

2018年度に導入された妊婦加算は凍結されましたが、2020年度に新たな仕組みが導入されることになっています。

新制度の内容を簡単に説明すると、「産婦人科の主治医に対して産婦人科以外から医療に必要な情報を提供したときに料金が上乗せされる」というもので、医療費の上乗せは患者の同意を得た場合にのみ行われます。

妊婦加算との大きな違いとしては、新制度の対象者は妊婦に限らない点です。

また、妊婦に対する診療のクオリティをアップさせるために、以下のような対応が実施されることも決まっています。

  • 妊婦の診療に必要な情報を得られる相談窓口の設置
  • 産婦人科以外の医師に対する研修の実施

妊婦加算は妊娠に配慮をしない診療をした場合でも、診療料が高くなる問題がありました。

しかし、新制度は胎児の有無に関係なく条件を満たした場合に医療費が上乗せされるので、問題をひとつ解消したと考えられるでしょう。

とは言え、これから妊娠を考えている人にとっては、医療費負担が増す可能性のあること自体が不安材料となるかもしれません。

参考:妊婦加算は珍しい?世界の少子化対策

妊婦加算で見直される日本の少子化対策ですが、他国の妊産婦をめぐる医療体制について軽く触れてください。

妊婦加算の導入・廃止をきっかけに、日本の少子化対策の見直しが行われています。最後に、他国の妊産婦をめぐる医療体制を簡単に紹介します。

例えば、イギリスではNHS(National Health Service)という公的医療機関に登録していれば、基本的な医療行為をすべて無料で受けられます。

そのため、日本では自費診療になることが多い医療行為を受けても、一切お金を払う必要はないのです。

その他、所定の申請をすれば、産後1年経過するまで歯科治療や薬代が免除される仕組みが整っています。

イギリス以外の主な少子化対策をまとめると、次の通りです。

国名 少子化対策の内容
フランス 子供が多い世帯ほど所得税の負担が軽くなる
スウェーデン 次の子供を2年半以内に出産すると、先に出産した直前の所得の8割が再び保障される
ドイツ 大学までの入学金、授業料がかからない

日本では、「妊娠や出産、子育てはお金がかかるもの」と考える人が比較的多くいます。

金銭的な負担が少子化を止められない原因のひとつである以上は、他国の少子化対策を参考に日本でも十分なサポートを整える必要があるでしょう。

まとめ:妊婦加算は運用方法や理解度に問題あり。2020年度からは新制度に移行

事実上の妊婦税とも呼ばれた妊婦加算について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

今回の記事のポイントは、

  • 妊婦加算とは、通常よりも妊婦の診療費が割高になる制度
  • 産婦人科以外でも妊婦が適切な診療を受けられるために導入された
  • SNSの炎上をきっかけに批判が集まり、妊婦加算は凍結された
  • 2020年度に新制度が導入される

でした。

2018年度に導入された妊婦加算は凍結されましたが、2020年度はそれに代わる新制度の導入が決まっています。

そのため、これから妊娠を考えている人は、金銭的な負担を感じる可能性があるでしょう。

少しでも不安を解消するために、テレビや新聞などで新たに導入される制度の内容を定期的にチェックすることをおすすめします。

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